アーティスト・鷲尾友公さん家族のヒサヤオオドオリパーク周辺での日常

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あいちトリエンナーレ2019では四間道・円頓寺会場の巨大壁画を手掛けるなど、地元・愛知を拠点に国内外で活躍しているアーティスト、鷲尾友公さん。「高校生の頃から来ている」と鷲尾さんが話すヒサヤオオドオリパークエリアの魅力を、鷲尾さんのご家族と一緒に辿っていきます。

ヒサヤオオドオリパーク シバフヒロバ

「公園って、おじいちゃんでも子どもでも、誰がいてもいい場所」

「この辺りは高校生の頃からずっと来ているから、もう日常の一部って感じかな。去年もテレビ塔のホテルの仕事で毎日のように来てたし」。そんな風に話す鷲尾さんのMY FAVORITE ROUTEは、ヒサヤオオドオリパークシバフヒロバからスタートします。

ヒサヤオオドオリパークの一番北に位置するシバフヒロバ。家族3人で彫刻とベンチが一体化したモニュメントに座って遊んでいた鷲尾さんに、この場所を待合せに選んだ理由を聞くと、「やっぱり公園っていったら、ヒロバだと思うんだよね。この場所は普段からよく来てる場所だし、待ってる間に子どもも走り回れて喜ぶし」。続けて、「公園って、誰が来てもいい自由な場。おじいちゃんでも子どもでも。遊んでても、散歩してても、寝てる人がいてもいい」と話します。



ヒロバの中で待ち合わせたのは、鷲尾さんが車両側面のイラストをてがけた「SOCIAL TRUCK & PARKS」。公園や近隣エリアの案内所であるこのトラックは、2012年に栄エリアの活性化を目指して発足した「SOCIAL TOWER PROJECT」を進めている「THE SOCIAL」が運営しています。

「トラックの絵は途中でいろいろ迷ったけど、最終的にいまの絵になったんだよね。みんながどう思うかは分からないけど、僕はすごく気に入ってる。といっても、あの絵のことを普段みんなそんなに意識して見てないでしょ(笑)。それくらいがちょうどいいんじゃないかな」。鷲尾さんが気に入っているという絵は、人によっていろいろな見え方を楽しめる絵です。“普段意識して見てないでしょ”という言葉は、人によって利用の仕方が違う都心の公園に違和感なく溶け込んでほしい、という気持ちの表れかもしれません。

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セントラル画材

「僕が描くものはアートというよりデザイン寄りかもしれない」


次に向かったのは、シバフヒロバの東側エリア・泉1丁目にあるセントラル画材。鷲尾さんが15年以上通っているという画材専門店で、「ここではスケッチブックや塗料を買ったりいろいろ。あと、リキテックスっていう塗料を注文してたりする」というアーティストならではのMY FAVORITE ROUTEです。

長年ここ久屋エリアを中心に、アートやデザインなどものづくりをする人々を応援し続けているセントラル画材。その中田社長は「色々な考え方があると思いますが、自分の中では『アートは社会的な問題の提起、デザインはその問題を解決する方法』という視点で思考を整理している部分もあります」と話します。筆者が聞いた中田社長の視点を鷲尾さんに伝えると、彼なりの制作に対する想いの一部を話してくれました。



「なるほど、確かにそうですね。社長の視点で言うと僕自身はどちらかといえば、アートというよりはデザイン寄りの感覚で制作をしているかもしれないです」。そして広小路通の歩道に配置されている彫刻やモニュメントなどのアート作品を例に出して、自身の作品への想いを続けます。「広小路通に銅像やオブジェがいくつかあるじゃないですか。あれって多分、いつもそこにあることが日常だと思うんです。僕の描くものもああいった作品のように街に溶け込みながらも存在感があればいいのかなと思っています」。鷲尾さんの描く作品からは独特の世界が感じられますが、一方で街並みと調和する主張しすぎないバランス感を持っているようにも感じます。

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セントラルブリッジ

「ここから見える景色はいいよね、名古屋らしい場所だと思う」

セントラル画材から南に下り、桜通りをまたぐ形でかかるのがセントラルブリッジです。橋の上から東には高岳方面、西には名古屋駅方面へとまっすぐ伸びる桜通とビル群を眺めることができます。


「去年、鷲尾さんが(テレビ塔の)THE TOWER HOTEL NAGOYAの仕事をしてる頃、週2〜3回、子どもと一緒に公園に来て散歩してました。その時に毎回、このブリッジを渡ってテレビ塔まで歩いてましたね」(鷲尾さんの奥さんのマリさん)


「この橋に特別な思い入れがあるわけじゃないんだけど、名古屋らしい場所だと思ってて。それに、ここから見える景色もいいよね。最近は夜になるとイルミネーションもキレイだし、いまは子どもがこの橋を喜んで走るんだよ(笑)」
家族3人で並んで歩きながら、目の前に見えるテレビ塔へと向かいます。

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THE TOWER HOTEL NAGOYA

「ホテルも作家もみんなが“うまいこといく”環境作りに時間をかけた」


2020年秋にリニューアルした名古屋テレビ塔。その中にホテルができたことはご存じの方も多いと思いますが、ホテル内のアートに関するキュレーションの大枠を鷲尾さんが担当したことは意外に知られていないかもしれません。ホテルの入り口はテレビ塔の南西側。エントランスでは鷲尾さんの絵が出迎えてくれます。エレベーターでフロントに上がり、ホテルの女将・豊田さんに話を聞きました。





「鷲尾さんとは本当に何度も話し合いました。例えば、私たちは鷲尾さんの作品を一番目立つところに飾りたいと思っていたし、各部屋の作品についてもアーティストの方に送ってもらって飾ろうと考えていたんです。でも、そんな話を鷲尾さんにすると、“あー、それだとなんか違うんだよなー”って。何回言われたことか(笑)。結果的にアーティストに来てもらって、お部屋を見て、作品作りをしてもらえたことで、お部屋と作品のバランスが本当に見事な、世界に誇れるアートホテルになったと思います」。


名古屋のシンボルとして長く愛されてきたテレビ塔が、世界的なホテルブランドグループに加盟するホテルに生まれ変わったことは、まさに地元の誇りではないでしょうか。アート、インテリア、設え、窓からの眺めまで、すべてが一体となった居心地のよい空間を体験するために、ぜひ宿泊してみたいものです。

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ナゴヤ キッチュ エ ビオ

「ここに来ると、僕は公園をボーっと眺めながら待つ専門(笑)」

この日最後に訪れたのは、テレビ塔から久屋大通を北へ徒歩約5分、通りの西側にあるガラス張りのお店。素材にこだわる美味しいもの好きの間では有名なスーパー、キッチュ エ ビオです。


「ここには、週一回のまとめ買いのために家族で来てて。よく買うのは、お肉類とかヨーグルトとか。新鮮で美味しくて、意外にお値打ちなんですよ。あと、定期的に出店してる豊田市のパン屋さんの食パンもお気に入りですね」というマリさん。鷲尾さんも続けて「一時期、スムージーにハマってた頃、ここで買った野菜やフルーツを使って自分で作ってた。でも、だいたいは家族がゆっくり買い物している間、お店の前で公園をボーっと眺めながら待つ専門だけどね」と笑います。



のんびりとした雰囲気が伝わってくるファミリーでのお買い物エピソードに、聞いてるこちらまでリラックスモードになってきます。都心の大きな公園のすぐ横で、毎日の食卓を豊かにしてくれる地元スーパーの存在は、鷲尾さんファミリーにとって大切な場所のようです。

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最後に、昨年9月のリニューアル以降、多くの人が訪れている久屋大通公園について、セントラル画材の中田さんが話してくれた言葉で締めにします。
「面白そうだなと思わなければ、人は集まらないと思うんです。だから多くの人が来ていることが最大の評価というか。みなさんが行動で“こんな公園が欲しかった”と示してくれたんじゃないかと思います」。

今回は、鷲尾さんのように昔からこのエリアを生活圏にしている人の“MY FAVORITE ROUTE”でしたが、いかがでしたでしょうか?今後の“MY FAVORITE ROUTE”もお楽しみに!


Profile

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    鷲尾友公TOMOYUKI WASHIO

    1977年生まれ、愛知県出身。クラブ界隈のフライヤーやポスターなどの制作からはじまり、いまでは国内外問わず活動の場を広げているアーティスト。イラストレーション、グラフィックデザイン、アニメーション、立体造形など、ジャンルにとらわれない制作活動を続けている。